小さな子供たちが、親のスマホを器用に操作して動画を鑑賞する時代。
それでも、色鮮やかでかわいく楽しい絵本は廃れることなく書店に並んでいますし、絵本の読み聞かせもされています。
そんな絵本、私も子供の頃親から与えてもらい ボロボロになるまで読んだり、ページを開いては 絵を眺めたりしていたものです。
そんな中で、一番のお気に入りでもあった絵本『ぐるんぱのようちえん』は、発刊から半世紀以上も経た今も人気があります。
少し前にこの本のことを思い出し購入しましたが、久しぶりに手に取りめくったページの先にあった世界は、現代の子供のみならず 生きづらさを感じる大人たちへのメッセージも満載でした。
『ぐるんぱのようちえん』は、こんな絵本
『ぐるんぱのようちえん』は月刊「こどものとも」で1965年5月に発行、翌年に「こどものとも傑作集」として第1刷後 既に130刷以上を重ねているロングセラー絵本です。
作者の西内ミナミさんは「ゆうちゃんと めんどくさいサイ」「ごろごろどっしーん」などの幼年絵本を多く発表していますが、「ぐるんぱのようちえん」が最初の作品だそうです。
挿絵・イラストを描いた、イラストレーターの堀内誠一さんのすすめで書いた物語だとか。
こんなに長く愛される絵本となるとは、想像していなかったでしょうね。
情景が浮かびやすい文章と、水彩画の優しいタッチのかわいらしくカラフルな絵は、幼い子供たちの耳と目に スッと飛び込んできます。
「とくべつ はりきって」「もうけっこう」「しょんぼり しょんぼり」…などの言葉が、それぞれのページに出てくるので、リズム感があります。
半世紀以上たっても、私の愛読書として 改めて買って手元に置きたくなったのは 懐かしさはもちろんなのですが、移り変わる時代や流行語が生まれる中で 流行り廃りのないシンプルなわかりやすさがあるからなのだと思います。
今では 幼い子供向けに英語はもちろん、タイ語や韓国語などにも翻訳されて世界中でも愛される絵本となっています。
『ぐるんぱのようちえん』あらすじ
大きなゾウのぐるんぱは いつも寂しくひとりぼっちでジャングルで暮らしていましたが、大人になっても何もせず めそめそしているのに見かねた他のゾウたちに「働きに出そう」と、会議にかけられます。
臭くて汚れた体を洗ってもらったぐるんぱは、ビスケット屋→皿作り→靴職人→ピアノ工場→自動車工場と働きに出ますが、そこで「とくべつ はりきって」作るそれぞれの物がぐるんぱの体に合わせた特大サイズ。
人間には合わない「もう けっこう」と働くことを断られ、作った品物を自身で引き取りながら「しょんぼり しょんぼり」しながら放浪します。
自分で作った大きな車に引き取ったあれこれを乗せて放浪している先で出会ったのは、12人の子供がいるお母さん。
たくさんの洗濯物を干しながらお母さんはぐるんぱに、子供たちの遊び相手になってほしいとお願いをします。
そこでぐるんぱは、大きなビスケットを分け与え ピアノを弾きながら歌っていると、たくさんの子供たちが集まってきました。
そこで、たくさん集まった子供たちに 幼稚園を開いたぐるんぱ。
お皿はプールに、靴の中ではかくれんぼ…
もう、ぐるんぱは一人ではありません。
こんな人にも読んで欲しい
ひとりぼっちだったぐるんぱが、寂しくて涙を流していたぐるんぱが、最後には笑顔でたくさんの子供たちに囲まれている様子は、物語を読み終わった子供には 笑顔と幸福感を感じさせてくれるものでしょう。
(英語訳での表題は『The Happiest Elephant』。)
働きに出るきっかけは 自身の意思ではなくジャングルの会議の結果でありますが、それでも失敗しながら 否定されながら次へと進むぐるんぱに、成長と強さを感じさせられるものです。
ひとりぼっちで寂しく、自分では何をしたいのか 何ができるのかがわからない…そんな感情を抱くことは、大人であっても多々あるかと思います。
『自己肯定感』という言葉を頻繁に聞くようになったのも、現代になってからではないかとも感じています。
自分の存在意義や役割。
模索しては 生きづらささえ感じさせられて、躓くことも多いこの時代。
それでも、それぞれが誰かにとって必要で かけがえのない存在にもなるんだよ…と、ぐるんぱがそっと教えてくれているような気がします。
それに気づくきっかけは小さなものかもしれませんが、なんとなく閉塞感を感じたり自分の方向性が見えないと感じる大人にも、この絵本は『小さな気づき』を与えてくれるのでは?
そんなことから大人の方にも、自身の幼少期を懐かしみながら読んで欲しい。
そんな絵本です。
まとめ
今回は懐かしい絵本をご紹介しましたが、今でも人気がある「ぐるんぱ」は 絵本から飛び出してぬいぐるみやグッズなども販売されています。
ゾウのキャラクターといえば「ババール」もよく知られていますが、大人がちょっとした動物のキャラクターグッズを持ち歩くのも楽しいですよね。
絵本の物語と共に、ぐるんぱを思い出し楽しんでみてはいかがでしょうか。